誰のための食料自給率なのか

 江戸時代に記された『農業全書』は、日本で初めての農書らしい農書です。それ以前は代々同じような何となくの農法で行われていたと考えられています。

今と比べると、どれくらいの収穫量だったのでしょうか。お米を例にして考えてみましょう。

川瀬巴水 「金郷村」


 現在の一反歩当りの米の収量は6〜8俵で、多いときや多いところでは10俵くらいになります。一方、江戸時代では一反歩で一石(150kg/2.5俵)収穫できていたそうです。

つまり、今の収穫量の四分の一から半分程度の収量しかなかったということです。現在は品種改良等がなされているので、農法だけが影響しているとは言い切れませんが、驚きです。

このような収穫量では、飢饉が起こってしまうと多くの命が失われてしまいます。そういう歴史的背景があるためなのか、現政府はカロリーベースでの生産量を気にしているのかもしれません。


 しかし、「生産量が少ない少ない」「食料自給率が低い低い」と政府があれだけ騒いでいるにも関わらず、一方で減反政策を取るという矛盾したことを行っていたのも事実です。しかも、日本ではカロリー換算で3,000万人分の食品が毎年廃棄されているようです。

そして、生産者である農家は、沢山作れば作るほど儲かるわけではなく、過飽和になってしまった瞬間単価が急激に落ちてしまいます。そのため出荷調整、生産調整という名目で食べられる野菜などが破棄されるのです。

一体、誰のための野菜、果物、誰のための食料自給率なのでしょうか。


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